一宮市内を車で走っていると、「あれ、ここも空き家かな」と感じる家を見かけることが増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。ところが、市の統計を見ると、実は空き家の数はこの5年間で減少しているという意外な事実があります。今回は、その数字の裏側にある「本当の理由」を、皆様と一緒に読み解いていきます。
一宮市空家等対策計画によると、市内の空き家(種類を含む住宅の空き家総数)は16,920棟とされています(一宮市空家等対策計画 P.3 より)。これは市内の全住宅のうち一定割合を占める数字であり、一見すると「かなり多い」と感じられるかもしれません。
ただし、この数字には「賃貸用の空き家」「売却用の空き家」なども含まれており、いわゆる「放置されて危険な空き家」だけを指しているわけではない点に注意が必要です。
はい、統計上は減少しています。一宮市空家等対策計画によれば、前回調査時と比較して、空き家総数は減少傾向にあることが示されています(一宮市空家等対策計画 P.5 より)。
「街を歩くと空き家が増えているように感じるのに、なぜ数字は減っているのか」と疑問に思う方も多いでしょう。この感覚のズレこそが、今回のテーマの核心です。
主な理由として、以下の3点が挙げられます。
1. 老朽化した空き家の解体が進んだこと
危険性が高いと判断された空き家について、所有者による自主的な解体や、行政の働きかけによる除却が一定数進んだことが要因の一つです(一宮市空家等対策計画 P.7 より)。
2. 中古住宅としての流通・活用が増えたこと
空き家バンクや不動産市場を通じて、第三者に売却・賃貸されるケースが増加し、「空き家」から「居住されている住宅」へと変わった事例も一定数あります。
3. 世帯構成の変化により、住み継がれるケースが増えたこと
親世帯の家に子世帯が戻って住む、いわゆる「二世帯利用」への転換も、空き家減少の一因として考えられます。
ここが今回、最もお伝えしたいポイントです。総数が減っても、「管理不全の空き家」の割合は必ずしも減っているわけではないからです。
一宮市空家等対策計画では、老朽化が進み倒壊等の危険性がある「特定空家等」に該当する、あるいはそれに近い状態の空き家について、引き続き注意が必要であると指摘されています(一宮市空家等対策計画 P.9 より)。
つまり、「数は減ったが、質は必ずしも改善していない」という状況です。特に、相続後に放置されたまま何年も手つかずになっている家は、周囲に草木が伸び、屋根や外壁が傷み、近隣トラブルの火種になりやすい傾向があります。
一宮市は市街地エリアと郊外・農村エリアが混在する地域特性を持っています。市街地では駅近の利便性から比較的早く買い手・借り手が見つかりやすい一方、郊外エリアでは「立地的に活用が難しい」という理由から、空き家が長期間放置されやすい傾向があります(一宮市空家等対策計画 P.11 より)。
つまり、「一宮市全体で空き家が減っている」という統計だけを見て安心するのではなく、「ご自身の実家がどのエリアにあるか」によって、抱えるリスクの大きさは大きく異なるということです。
統計上の「16,920棟」「5年で減少」という数字は、あくまで市全体の傾向を示すものにすぎません。大切なのは、その数字の中に「ご実家がどう位置づけられているか」を考えることです。
「うちの実家は大丈夫だろうか」「将来、空き家になったらどうしよう」——そうした不安を抱えている方こそ、早めに専門家へ相談し、今の状態を正しく把握しておくことが安心への第一歩となります。
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連載もくじ
一宮市の空き家問題を、はじめから読む
この記事は、一宮市の空き家問題を全30話で解説する連載の一部です。
人口動態から相続・売却・補助金まで、順を追って読めるようにまとめています。