一宮市は昔から持ち家率の高い地域として知られています。「自分の家を持っている人が多い=地域が安定していて安心」というイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。
しかし、空き家問題の観点から見ると、この「持ち家率の高さ」こそが将来の空き家予備軍の多さにつながっているという、少し意外な事実があります。
持ち家であるということは、裏を返せば「賃貸のように次の入居者が決まらなければ空室のまま放置されにくい仕組み」がないということでもあります。賃貸物件であれば、大家さんが空室を避けるために積極的に次の借り手を探しますが、持ち家の場合はそうした市場の力が働きにくいのです。
住んでいた方が高齢になり施設に入居したり、亡くなられたりした後、家族が「とりあえずそのままにしておこう」と判断すれば、その家はすぐには売られず、貸されることもなく、静かに空き家となっていきます。持ち家が多い街ほど、こうした「静かな空き家化」が進みやすい土地柄だと言えるのです。
理由は主に3つ考えられます。
1つ目は、所有者の高齢化です。
一宮市では持ち家に長く住み続けている世帯が多く、所有者自身の年齢も高い傾向にあります。高齢の所有者が施設入居や入院などで自宅を離れると、そのまま空き家になりやすい構造があります。
2つ目は、家族間の意思決定の遅れです。
持ち家は「実家」として家族の思い出が詰まっていることが多く、売却や解体の判断が先延ばしにされがちです。相続人が複数いる場合はさらに話し合いが長引き、その間に空き家として時間が過ぎていきます。
3つ目は、賃貸市場への流通のハードルです。
長年住んでいた持ち家をいきなり人に貸すことに抵抗を感じる方は少なくありません。リフォームの手間や費用、知らない人に貸すことへの不安から、賃貸に出さずそのまま空けておく選択をする方も多いのです。
一宮市空家等対策計画でも、空き家所有者の年代は60代以上が大きな割合を占めることが示されています(一宮市空家等対策計画 P.〇 より)。持ち家率の高さと所有者の高齢化が重なり合うことで、空き家予備軍が静かに積み重なっているのが実情です。
一宮市全体の空き家率という数字だけを見ると、それほど深刻ではないように感じられるかもしれません。しかし、この数字はあくまで「今すでに空き家になっている家」を数えたものです。
本当に注視すべきは、その背後にある「今は住んでいるが、将来的に空き家になる可能性が高い家」、つまり空き家予備軍の存在です。持ち家に一人でお住まいの高齢の方が多い地域ほど、この予備軍は増えていきます。
ご実家がまさにこの状況に当てはまるという方も多いのではないでしょうか。今は誰かが住んでいるから大丈夫、と感じていても、数年後には空き家になっている可能性は決して低くありません。統計の数字の裏にある「これから」を見据えることが、今の私たちには必要なのです。
大切なのは、まだ空き家になっていない今のうちに、家族で将来のことを話し合っておくことです。
「誰が実家を継ぐのか」「もし誰も住まないなら、いつ・どう手放すのか」といったことを、所有者本人が元気なうちに話し合っておくことで、いざというときの判断の遅れを防ぐことができます。
また、実際に売却や活用を考える際には、まず「今の家がどのくらいの価値があるのか」を知ることから始めるとスムーズです。価格の目安がわかれば、家族での話し合いも具体的に進めやすくなります。
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連載もくじ
一宮市の空き家問題を、はじめから読む
この記事は、一宮市の空き家問題を全30話で解説する連載の一部です。
人口動態から相続・売却・補助金まで、順を追って読めるようにまとめています。